お客様のこころをつかむ「現場力」

お客様のお役に立ち、愛される店に――。その想いを支え、実現へと力強く導くエンジン、それが「現場力」。

お客様に心から満足していただくために、今、何をすべきか。 私たちは、その答えを導きだすのは「現場力」以外にないと信じている。

たとえば、現場で想定にないような事態が起こったときどう対応するか。
ただひとつ、現場スタッフの判断基準になるのは「すべてはお客様の満足のために」という行動規範だけ。この最終目標を指針として、千変万化のトラブルに「自分はどうするか」を日々自問自答しながら業務にあたるのが、京阪ザ・ストアのやり方である。
「現場力」とは、そうして現場で揉まれながら自分でつかみとった、スタッフ一人ひとりの人間力とも言える。

必要なのは、細かくHOWTOを記載したマニュアルではなく、「お客様の満足」という一点を目指す「現場力」。このしなやかでたくましい底力が、京阪ザ・ストアをうごかしている。

徹底的にお客様のことを考える

「今日はステーキのお肉買いたいんだけど、いつものお兄さんいる?」
フレスト天満橋店で精肉売場の部門長を任されていた浜上に、お得意さまから指名が入った。
「今日は孫達が来るから、いつもよりうんとおいしいところちょうだい」
「○○さま、毎度ありがとうございます!とっておきのとこ、すぐに切ってきますね!」
気心の知れたお客様とのテンポ良いやり取り。フレストではそんな光景が日常だ。

「最近のスーパーでは珍しいと思います。手間を省いて大量販売に移行する大手スーパーが多いなか、当社はトレンドに逆行しているかもしれません」
それでも浜上が対面販売にこだわったのにはわけがある。
「おいしいお肉を食べる日って、ちょっと特別な日じゃないですか。自分の食べたいものを好きな量だけ買いたいですよね。それに、お肉って切り方によって柔らかくも固くもなるんです。ご注文をいただいてから手でカットしたほうが絶対に喜んでいただけるので。」

お客様においしいお肉を食べてほしい、その一念から周囲を説得して実現させた対面販売。
やってみると、別のメリットも。
「スーパーは基本的にセルフサービスですから、お客様と会話する機会は意外に少ないんです。だから、声をかけてもらえたときがチャンスなんですよ。そのときに、いかにご要望に応えられるか、満足していただけるか……」

それについて、魚一筋に8年勤めあげてきたフレスト香里園店の吉田店長もこう語る。
「パックされていない裸の魚を置いているスーパーって少ないんですよ。管理の手間もかかるし、人が常についていないといけない。だけどお客様が選んだ魚を、そのお客様のためだけにさばいてあげることで、ただパックをかごに入れるより満足度は絶対に上がります。また、それをきっかけに会話することができますよね。一度喜んでもらえると、また来ていただける。他のスーパーではやっていないことをどれだけできるか、そこが勝負どころだと思います」

ただ単においしいお肉や魚を提供するだけで終わらせない。対面販売をコミュニケーションのチャンスととらえ、常に貪欲に潜在ニーズや満足度アップのヒントを探している。
徹底したお客様志向が身に沁みついているからこその発想だ。

答えは現場にある

お客様が本当に求めているものは何なのか。それは現場に立った者にしか分からない。
例えば、コンビニエンスストアに求められているものは何だろうか。「品揃えの豊富さ」「正確さ」「多様なサービス」……いろいろ考えられるだろうが、京阪沿線の駅ナカを中心に38店舗を展開するコンビニ、アンスリーでは「レジでの対応スピードの速さ」を重要視している。
入社8年目、アンスリー枚方エリア11店舗を統括する今井はこう言いきる。
「アンスリーでは、電車に乗るついでに必要なものを買いに来られるお客様がほとんど。だから、私たちがご提供すべきは、限られた時間のなかでベストなサービスをご提供させていただくことなんです。通勤ラッシュ時であれば、一時間に400~500人のお客様に対応しています」
実に一人あたり10秒以内というスピードである。 「でも、決してスピードだけを優先しているわけではありません。ほとんどのお客様は通勤や通学でご利用されるので、毎日のように顔を合わせる方も多い。ですから自然と『ありがとうございます』のあとに『いってらっしゃいませ』や『おかえりなさい』のひと言がプラスされますね」
無駄のない動きに添えられる気持ちのよい挨拶。同じお客様と毎日のように接するうちに、現場で自然発生的に生まれたオリジナルのサービスだ。大手チェーンのマニュアルではマネのできない独自性、これも「現場力」がなし得るワザである。

フレスト香里園店の吉田店長は「京阪ザ・ストアの特長として、現場に任される裁量が大きいというのがあります」と語る。
「たとえばサバ一匹でも、定められた値段に品質が合っていないと現場が判断したら、値段を変えることができる。結果的に損したり、売れ残ることもあるけれど、それは別のアイデアで挽回しなければいけない。厳しさも含めて現場仕事のおもしろさなんです」
生鮮食品のなかでも特に、魚は人の力が及ばない天然物。ときには決められた価格に適合しないものも入荷する。「良いものを適正な価格で提供する」―消費者からすれば当たり前のことだが、それを当たり前にするのは難しい。絶対的なお客様目線がベースにあり、さらに現場に信頼できる判断力があってこそ可能になる。

そのときその場に求められるものを敏感に読み取って、それに対してベストを尽くすこと。現場を知らない人間には、いくら知恵を絞っても正解を導き出すことはできない。現場ならではの気づきを一つひとつ積み重ね、彼らが目指すのは「お客様の心をつかんで離さないこと」だ。

人と関わることで自分自身が成長できる

接客業には向き不向きがあるというのが世間の定説。だが、京阪ザ・ストアでは、そんな定説をくつがえす人も多い。
「本当は人と接するのが苦手なんです」と語る今井店長。
「でも、小売業は人あっての商売、人とのつながりが一番大事です。それはお客様だけでなくて、一緒に働くスタッフにも言えること。たくさんあるコンビニのなかでアンスリーを選んでくれたことに感謝したいんです。それに、スタッフが楽しく働いてないと、顔に出てしまう。それってお客様にも伝わるんですよね」
では人付き合いが苦手だという今井が、どうやって11店舗、アルバイト含め総勢178人をまとめているのだろうか。
「人を見るときには『その人の良いところ』を探します。誰にでも何か長所があるものだし、見つからなければ作ることもできる。そこを徹底的に褒めて、スペシャリストになってもらう。これは誰に教わったわけでもなく、自分で勉強して試行錯誤するなかであみだした方法です。
自分が学生時代アンスリーでバイトをしていて、一緒に働いている人に恵まれ、成長できた経験は大きい。学生バイトの子のなかには、接し方ひとつで人が変わるように成長する子もいます。就職して離れていくのは寂しいけど、その子の成長の手伝いができたと思えば満足です」

逆に、人と接することが好きで好きでたまらない、という人間もいる。社内で「ホスピタリティの塊」と異名をとる原は、現在は難波のMUJIcomに勤務している。 「レジって毎回いろいろなお客様が来られて、いろいろなモノを買われますよね。毎回違って、同じことは起きないのが当たり前。そんななかで精一杯サービスして、自分なりのプラスアルファを工夫する…。その積み重ねで、お客様が私のレジを選んでくださるとうれしくて。京阪ザ・ストアにレジがしたくて入社したのは私くらいじゃないですか(笑)」
そんな原も、フレスト松井山手店のレジを統括するポジションに来たばかりの頃は、試行錯誤の連続だった。最高50人の大所帯であるレジチーム。そこへ入社2年目の新人がリーダーとして配属されてくる。ベテランのパートさんたちと信頼関係を築くまでが大変だった。
「レジにどんどん入ってお客様に対応しているところを見てもらったんです。口だけでなく行動で語るようにしたら、だんだん認めてもらえて信頼してもらえるように。最近は、自分が教えて育てた人が褒めてもらえると、自分が褒められるよりうれしいんです」

お客様満足度を高めるというゴールに向かって、現場スタッフは知恵を絞り、それぞれのやり方でアプローチする。得意不得意は人それぞれだが、現場で問題に直面したときにどう対応していくか、そのなかで本人も驚くような成長が生まれる。自分でつかんだ答えは、与えられた知識にはない重みと、どんな場面にも応用がきき、決して折れないしなやかさを持っている。

  • お客様のこころをつかむ「現場力」
  • 刻み込まれた京阪グループの「DNA」
  • 沿線を越えて広がる「可能性」